納涼ジャズ! アンドレ・プレヴィン at ムジークフェラインザール in ウィーン

アンドレ・プレヴィン(b.1929)といえば、指揮者としての知名度が最も高いが、作曲家、ピアニストとしても名声を獲得しているマルチなアーティスト。特にピアニストとしてのキャリアは、ウィーン・フィルとの弾き振りによるモーツァルトのピアノ協奏曲録音があるかと思えば、ジャズでも凄腕を発揮している。過去、こだクラでもデューク・エリントンガーシュウィンの名盤をエントリーしたのは記憶に新しい。ここまで書くと、どこかレナード・バーンスタイン(1918-1990)との共通点も感じるが、プレヴィンの素晴らしさは誰もが認める一流のジャズ・ピアニストであったこと。彼が20代の1950年代から既にジャズ・ピアニストとしてレコーディングを開始しているが、1980年代半ばに英国と米国の主要オケのポストに就いたロイヤル・フィル(1985-1992:首席指揮者)とロサンゼルス・フィル(1985-1989:音楽監督)、そして名門ウィーン・フィルとのレコーディングを結び付けた米国の新興レーベル、テラークへのセッション録音を開始すると、一方でジャズも同レーベルに積極的に再開する。クラシックとジャズ双方で力を入れていた

テラークレーベルは彼にとっても最高のパートナーだったに違いない。

そんなプレヴィンが1995年にジャズの名門VERVEレーベルにライブ録音を残した貴重なジャズアルバム、「Andre Previn Jazz at the Musikverein」を納涼ジャズの音源として今回エントリーしたい。収録曲は以下の通り。

1.Stompin' at the Savoy

2.Previn's Introduction

3.I Can't Get Started

4.I'm Gonna Sit Right Down and Write Myself a Letter

5.Medley:What'll I Do / Laura

6.What Is This Thing Called Love?

7.Captain Bill

8.Satin Doll

9.Hi Blondie

10.This Time the Dream's on Me

11.Medley:Prelude to a Kiss / The Very Thought of You / Come Rain or Come Shine

12.Sweet Georgia Brown

アンドレ・プレヴィン(ピアノ)

マンデル・ロウ(ギター)

レイ・ブラウン (ベース)

(1995年6月24日ライヴ録音、ムジークフェラインザール、ウィーンにて収録、VERVE海外盤)

この音源の最大のポイントはクラシックの殿堂、ウィーンのムジークフェラインザールで行われたライヴ録音であるという点。通常、ジャズ録音はスタジオやライブハウスで収録されることが多く、会場の特性からデッドな音響であることが多いが、ここではコンサートホールとして世界最高の音響空間を誇るコンサートホールでの録音というのが何とも豪華!ジャケットにもそのムジークフェラインザールが写っている。ムジークフェラインといえば、2009年に現地を訪れたのが懐かしい。アルバムにはチャプター2にプレヴィン自身の貴重なMCも収録されている。

共演は既にテラークでもレコーディングを行っている気心の知れた仲間達。ベースのレイ・ブラウン(1926-2002)はソニー・ロリンズ(b.1935)やオスカー・ピーターソン(1925-2007)のバックを務めた大御所だし、ギターの名手マンデル・ロウ(1922-2017)とも古くからの旧友だったことをうかがわせる。ここではプレヴィンら3人が心ゆくまでジャズに浸り、クラシックの殿堂が見事なジャズ色に染まっているのが分かる。テクニックをあからさまに誇示するような曲はないが、プレヴィンの冴えたアドリブはさりげなく発揮されている。

誰もがリラックスできるような大人の選曲。ライヴゆえに拍手も収録されており、曲を追うごとに自然と熱を帯びて盛り上がり、まさに極上の一夜だった様子が目に浮かぶ。ウィーン・フィルを振る姿も、ジャズを奏でる姿も、同じ音楽家としてのプレヴィンに、ウィーンの聴衆は多くの感動と尊敬の念を抱いたに違いない。本アルバムは音楽には垣根がないことをプレヴィン自身の演奏が示してくれた稀有なアルバムといえるだろう。

【過去ブログ:アンドレ・プレヴィンのピアノ音源】

■ジャズ・ピアノ対決!プレヴィンとバレンボイムの快演〜デューク・エリントン アルバム2選

■のだめ使用曲?モーツァルト:「2台のピアノのためのソナタ」K448〜ラローチャ&プレヴィン他4選

R.シュトラウス:「ばらの騎士」〜プレヴィン&キュッヒル(ウィーン・フィルコンマス)による貴重な共演

デューク・エリントンA列車で行こう」ディスク7選(後半)〜吹奏楽版、金管五重奏版、ジャズ・ピアノ版

ジェローム・カーン:「The Song Is You」ディスク4選〜ピアノ・デュオから弦楽四重奏まで

ガーシュウィン:ピアノ協奏曲へ調〜アンドレ・プレヴィンによるディスク3選